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8月17日(月) 今日も例年に比べると涼しい。 松竹映画「丑三つの村」を観る。都井事件(都井睦雄事件、津山三十人殺し)を題材とした作品。名前などは他のものに置き換えられている。R18指定。1983年制作。YMO散開の年の作品であり、影響を受けたのかシンセサイザーで音楽が作られているが、余り合っていない。 原作:『丑三つの村』(西村望)。製作:奥山和由。出演:古尾谷雅人(初代)、田中美佐子、池波志乃、五月みどり、石橋蓮司、夏木勲(夏八木勲)、大場久美子、新井康弘、ビートきよし他。 1938年に、岡山県で起こった津山三十人殺し。津山が付くが厳密にいうと当時は津山市内ではない郡部の寒村(現在は津山市内である)で起こっている。余りの異様さに、横溝正史が『八つ墓村』のサブストーリーとして用い、今では『八つ墓村』の中のエピソードとして有名である。そして「八つ墓村」はまた映画化されるらしい。 津山三十人殺しは、『八つ墓村』に出てくる話よりも遙かに陰惨である。松本清張がルポルタージュに都井睦雄の名を載せたのが、調書以外で犯人の名が広まる最初だったと思われるが、その後に他の作家が書いたノンフィクションなどでも都井睦雄の名は出てくるため、松本清張は偽名でなく本名を書いたことになる。 都井に当たる犬丸継男(いぬまる・つぎお。古尾谷雅人)は、村人から「100年に1人の天才」「村始まって以来の神童」と呼ばれる優秀な頭脳の持ち主だが、高等小学校を卒業後、師範学校を受けるかどうか迷いつつ、フラフラした生活を送っている。師範学校があるのは岡山市で、たった一人の身内である祖母から離れる訳にはいかない。 村には夜這いの習慣があり、継男も目にするが、「夜這い禁止」運動が起こっており、実際、夜這いをして見つかり、首吊り自殺に見せかけて私刑に処された者も出る。傍から見るとあんな高いところから首吊り自殺する人はいないはずだが、村民の知性ではそれすら分からないのかも知れない。 狭く人口流動のない村。先祖を辿るとみんなが血縁ではないかという噂もあり、継男は近親婚を怖れたということもありそうだが奥手だった。だがその後、複数の年上の夫人(夫は戦争で出征中)と関係を持つようになる。年上の女性が多い村。年下の女性で継男に好意を持っているのはやすよ(田中美佐子)ぐらいだ。結核に罹ることも怖れない。だがそのやすよも他の男との婚儀が決まる。この結婚に失敗し、一人に戻って次の婚儀が決まったやすよだが、継男の動きを予見していながら犯行を止めることは出来なかった。 継男が恋したのは和子(大場久美子)。しかし結核ゆえに継男は避けられるようになり、和子を恨むようになる。和子は他の男と結婚した。 成績優秀ということで村の人々から好意を持たれていた継男だが、学校もとうに卒業。徴兵検査では結核と診断される。継男は、「学問よりも戦地で戦う」ことが男の本懐と感じていたが、出兵は叶わなくなった。更に結核は当時不治の病であり、村人が皆、継男を避けるようになる。村の期待は一転して忌避すべき存在へと変わる。 猟銃を手に入れ、山で射撃練習を行う継男。モデルとなった都井睦雄は「鹿や猪を獲って滋養を付けます」と話していたそうだが、この映画では継男は、「鳥でも獲って」と話している。滋養を付けようというのは一緒だが、その裏には殺人計画が潜んでいた。 継男は、警察の取り調べを受け、猟銃3丁などを押収されるが、その後、大阪に買物に行った際に、大江橋の銃器店で猟銃2丁などを購入。更に日本刀なども手に入れた。戦中(盧溝橋事件後を戦中とした場合)のこの時期だが、おそらく今より銃や刀剣などの購入は容易かったのだろう。そもそも戦地では兵隊が銃や刀剣を毎日用いている。 都井事件とこの映画で異なるのは、現実には恨みを抱く女性が犯行日にたまたまよそに行っていて助かったのに対し(都井は遺書に「撃つべきを撃たず」と記した)、和子は村に帰省していて命を奪われるという点である。頭の両側に懐中電灯という異様ななりはそのまま再現されている。 都井事件を再現したこの作品だが、都井に当たる継男は、村の因習を憎んでおり、間もなく変わる時代の狭間にあって、戦前の日本にNoを突きつけている点が特徴である。 2019年(令和2)7月18日に京都アニメーション放火殺人事件(36名死亡)が起こるまで、津山三十人殺しは、日本の一度における大量殺人の最多記録であった。 |