「東京タワー」

教室の窓からは東京タワーが見えた　赤と白の輝き　東京の街のシャンデリア

昭和３３年の完成当時には醜いといわれたその塔は　僕の目には才たけた美女のように映った

窓から見た東京タワーは今もボクの目の中にある

多くの知識と思考力　それを励ます東京タワーの輝き

あの頃は良かったと　いうつもりはない　

若さの輝きはそれだけで有意義なものだけれど

目と耳の鋭さを　制御できないでいた

カクテル色のときめき　それを信じられるほどもう呑気ではない

それは夢のナイフで切り裂かれた死者の

血まみれの骨を思わせることもある

この世はおそらく誰が思っているよりも残酷だ

想像も出来ないこと　だがそれは全て起こったことだ　

本当に起こったことだ

祈りの声が呪詛に変わる　

解き放つのかとどめを刺すのか

今宵も東京タワーは天をさして建つ

                            ２００５／５／１２