「さよなら永久（とわ）に」
 

壁の存在を　ボクは誰よりも敏感に感じることが出来た

仮の世とはいうけれど　仮の制度が出しゃばっているのは良くないことだ

ここから抜け出る前に　何かを残しておきたいとは思う

世界を覆う壁を抜け　永遠の光が射すところに赴く前に

言葉から　多くのものがこぼれ落ちる　例えば服を着たストレスで　人間以外の動物のほとんどが死んでしまうように

言葉の衣装により　多くのものが死に絶える

だが言葉の意匠により　人は創造する　諸刃の剣という使い古された言い方を拒むなら

シバ神が生んだ奇術というべきか

とにかく残したいと思う　そしてそれは創造と破壊を司る

言葉

この牢獄に　さよならを告げる　永遠に

自由という　閉ざされた概念の更に上へと　ボクは向かうのだ　

花の美しさを愛でられる世界　一瞬の変転を楽しめる世界　斜めから見る楽園

木々の囀りに胸傷められる場所　陽の光が細胞を疼かせるところ

その世界の入り口で

ボクは多くの思い出を語るだろう

世界を区切る言葉の壁を壊すには　言葉を磨くしかないという矛盾だとか

存在そのものは言葉では問えないが　言葉そのものの存在は確信できるだとか

鳥たちが交わしていた秘密だとか　海の中のざわめきや歌や

誰を…　そうそれが最も重要だけれど

そしてボクは　自縄自縛に陥った哀れな失語症の社会にこう告げるだろう

「さよなら永久（とわ）に」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００５／５／２９