2023年8月 ←7月

8月5日（土） 午後6時から、大阪・上本町の大阪新歌舞伎座で、NODA・MAPの第26回公演「兎、波を走る」を観る。作・演出・出演：野田秀樹。出演：高橋一生、松たか子、多部未華子、秋山菜津子、大倉孝二、大鶴佐助、山崎一ほか。 『不思議の国のアリス』に着想を得たという作品だが、他の演劇作品、特にチェーホフの「桜の園」などは重要な役割を担っている。 アリスが行方不明になる。一方、桜の園ならぬ遊びの庭が競売に掛けられることになる。仮想空間では、AIによって新たな世界が生まれ、戯曲もAIによって紡がれていく。 二人の大劇作家もどきが登場する。チェーホフならぬ知恵豊富（大倉孝二）とベルトルト・ブレヒトならぬベルト取るとぶれる人（野田秀樹）であるが、二人はAIの劇作家である初音アイによって操られている。 現実と仮想空間の対比などで話は進んでいくが、三里塚の闘争からよど号ハイジャック事件につながり、最後は北朝鮮と韓国の国境線の話へとつながっていく。北朝鮮による拉致事件にも話は及んでいる。 野田秀樹らしいアナグラムが今回も採用されており、「兎、波を走る」をローマ字化して並び替え、USAGIもUSA－GIになるなど物語の展開に弾みをつけている。 「桜の園」は冒頭から引用が始まっているが、全編を通して引用が行われており、ラストの「全く生きてこなかったようだ」というフィールスのセリフまで効果的に取り入れられていた。