「２４歳」

その年　ボクの前には大きな未来が開けていた

あらゆる可能性が　餌に群がる魚のように　ボクを目がけてやって来た

背後には頂点　目の前にも別の頂点　更に向こうにも

それらに登るのは決して困難ではなかった

世界の頂上で　ボクは空を仰ぎながら　リラックスしていた

だが足下で　大地は確実に溶けていた

ボクの認識していた床が崩れ　昇ってきた梯子が外されようとしていた

過去の呪縛　愚かしき現状

しかしそれらはボクの意識の外で　気づくには余りに遠かった

眠りが破られたのは突然だった　世界は震えていた　空気も太陽も何もかもが

ボクは自分の名前を見つけられなかった　迷子の三歳児のように

ボクの責任ではない呪いが姿を現しつつあった　呪い　そう本当に呪いだった

言葉はもう余計なものだった　そこにあるのは言葉を寄せ付けない硬質なリアル　そして

ずれた認識の壁　現実も事実も真実もない　愚かしき摩天楼　築き上げたのは誰なのか？

誰もが誰かを見失っているのにそれに気づかず　馬鹿げた宴は続く

「手を挙げろ」　銃口がボクらに向けられていた　相手の顔は誰にも見えなかった

銃に弾は込められていなかった　それはすぐにわかった　しかしそれだけに一層恐怖は募った

相手は銃に弾が込められていないことさえ理解してはいないのだから

そういう無謀さが　社会の頂点で　翼を拡げていた

愚かしき時代の　愚かしき２４歳　１９９９年の出来事

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００５／５／２３